半導体と電池。経済安全保障の担保と脱炭素をスローガンに、主要国・地域による重要物資の囲い込み合戦が激化している。対中国包囲網の構築と自国産業の競争力強化を両立させるため、日米欧の主要国は「半導体と電池におけるサプライチェーン（原材料・部品の供給網）」のチョークポイントを握ろうとしのぎを削っているのだ。一方、ガソリン車やハイブリッド車（ＨＶ）といった内燃機関車から電気自動車（ＥＶ）へのシフトを急ぐ日系自動車メーカーは、従来の半導体不足に加えて、車載電池の買い負けに頭を悩ませている。調達力の弱体化が自動車メーカーの屋台骨を揺るがすことにもなりかねない。ただでさえ自動車産業の競争軸は激変している。典型例が車の開発・製造に「ソフトウエアデファインド」という考え方が生まれていること。ＨＶかＥＶかといった車のタイプを競う時代は終わり、ソフトウエアを主戦場とする戦いが始まっているのだ。国家ぐるみの覇権争いに端を発する「調達クライシス」は、トヨタ自動車を頂点とする国内自動車産業を瓦解させることにもなりかねない。半導体とＥＶ・電池を巡る国家間戦争の最前線を分かりやすく解説する。